温厚実直一本槍。
職人冥利に尽きた一生。
14歳で初代の一番弟子となった保之。
「保之、跡取りなんやから、皆と同じことをやっておってはいかんぞ」
父親である親方からのそんな言葉を胸に相当な覚悟で入門をしました。
気性の激しい父親とは正反対の温厚実直であった二代目白雲。
厳しく仕事に打ち込む父親のもと、そんな職人魂を受け継ぎながらも自らの柔軟な発想や創意工夫を大切にしました。
特に下絵の図案には徹底してこだわって、注文ごとに丹念に描き、井波でも二代目白雲ほど下絵を描いている人はいないといわれます。
芸術思考もあり、その下絵は誰にも真似る事はできないほど繊細で緻密なものでした。しかしながら「作家」としての活動は一切せず、客の注文に応じて知恵と技量を発揮する「職人一本」の初代からの教えを貫きました。
「趣味は仕事」と言い切り、初代同様に伝統彫刻に打ち込み、確たる技術のうえで、遊び心をもって創意工夫を楽しむ余裕もあった二代目白雲。
長キセルで刻み煙草をふかしながら下絵の構想にふけり、一人悦に入って淡々と楽しむ。
そんな姿勢が自然とお客様に満足もしていただくものづくりにつながっていたのではないかと思います。
昭和47年当時60歳で「現代の名工」として労働大臣賞を受賞。
伝統技術を次代に伝える事にも心血を注ぎ、育てた内弟子は秀水(後の三代目白雲)を含め22人にのぼりました。
現在の白雲工房の「職人一本」、「一貫したオーダーメイド」の姿勢は、初代から二代目、そして三代目の現在も受け継がれる変わる事のない大切な伝統の一つとなっています。